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メトロノームの使い方を間違えてる?機械的なタイム感と言われないために、変えるべき大前提とは?

11/8/2016

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メトロノームでギターの練習すると下手になる?機械的な演奏になる?正確さを追求する練習をすればそうです。本当は、自由になるためのメトロノームの使い方を知る必要があります。

内在するテンポ&フィールと正確さの違いついて、僕の学びや意見をシェアします。何よりも、気もちいいリズム体験を沢山蓄積する事が大切です。そこから想像し、出て来るものがあなたのリズムです。

これまで完璧さ、正確さをメトロノームで鍛えてきた人たちは、その使い方からどうしたら脱却出来るか?

では、正確さとは?どうして正確である事が前提となったのか?そこから紐解く必要があると思い、僕が以前から思っていた事も含めて書きました。


「基本的な事」の認識が変わった
​

基礎的な動作、テクニックは言うまでも無く大切です。

80:20の法則から引用すれば…
​
演奏で求められる価値の80%とは?

ピッチがしっかりしていて、いいタイミングで、いい音色で演奏できる。その上で、感情を込めて演奏できる…

使うのは習得したテクニック全体の20%、基礎的なものがほとんどです。

ハイテクが求められる場面は少ないです。


​これはスタジオシーンで特に言えるでしょう。

ポップミュージックを量産するにあたり、馬鹿テクを披露するスペースはそんなにありません。

また、時間=お金のシビアな世界で何度も録音できません。

いかに時間内に、高品質で納品できるか?が仕事です。早く出来ればそれが付加価値になります。


それで、「いい」という言葉が抽象的過ぎて分かりにくいのが問題です。

「いい」=「正確」なのか?


流行歌を大量生産したスタジオシーンの移り変わりに着目したら、若者の認識の変化が見える気がしました。


昔は違和感だったのが、普通となった
​

今はテクノロジーの進歩により、録音でかなりの微調整が利くようになりました。

音源も本物かどうか分からないほどです。

正確さだけ取れば機械にやらせた方がいいと思うのは、僕だけではないでしょう。


​ところが、80年代に打ち込みのヒット曲が増えてきた時は、音質もタイムフィールも違和感を覚えたものです。

冷たいロボットな感じが、未来的で新鮮だったといえば、そうでした。

その後、音質は進化し、リアルかどうか分かりません。

リスナーの聴覚も完璧な正確さに慣れ、それが普通となりました。

そういうものしか知らない若いリスナーもいるかもしれません。


音質が良くなったとはいえ、80年代に違和感だった完璧な正確さが基準となりました。


若い人たちの感覚でいいリズムとは、タイトなバンドサウンドとかカッティングのキレといった言葉に象徴されるように感じます。

これらはルースである事、揃っていないリズムがダサイと勘違いさせます。

もちろんその良さを知っている人はいますが(特に年配の方)、なぜ多くの人がそういう感覚になってしまったのでしょう?


​いつ頃から歯車が狂い始めたのか?

下のラリーカールトンの​80年代初頭のインタヴュー動画は、興味深いです。当時は録音テクの向上がめまぐるしい時期でした。

動画は3つのパートに分かれています。


正確さと、いいタイムやフィールの違いの認識に関する発言が、間接的ですがいくつか出てきます。

「若い人たちは、特別な何か(超絶テクとか)を提供しなければいけないのかもしれないけれど…僕が彼らに物足りないと感じるのはベーシックな部分」

「僕はベテラン達の素晴らしいタイム感、チューニングに慣れ親しんで来たから。それに経験、経験は積む事でしか得られない…その上、彼らは仕事が早い」

「ジェフ ポーカロ、テリー トラッター、エイブラハム ラボリエルなどをセッションに招くと、チャートを見て理解したらすぐに録音できるんだ。しかも感情を込めてくれる、そこが重要。それに慣れちゃったんだ。」


​4分6秒あたりからです。

(また興味深い事に、ドナルド フェイゲンのナイトフライというアルバムは元々スティーリーダン名義で録音されるはずだったという裏話が聞けます)

若い人の感覚で、この発言だけを捉えると、ベテランはよほど正確な仕事が、早くできたと勘違いするかもしれませんが…


昔を経験した人の証言
​

パート1の終わりから2の最初の部分は、職人の技について論じています。
​
「70年代後半から80年代初頭はステレオ機器の発達とともに、録音も完璧を追求するようになった」とカールトンは言っています。

「それぞれのパートをベストな音質で、そしてミュージシャンも完璧な仕事を求められるようになった」

​「全てのパートが鮮明に聴こえるようになった恩恵で、ミュージシャンは思い切り表現できる自由が与えられた」
​
何度も録り直しできるようになり、ハイテクを披露する音楽がやりやすくなったという事でしょう。

そこで過去のセッションとの比較で、面白い発言があります。

「以前はもっと生っぽくて、エナジーを感じ、ミュージシャンが悦に入っているのが分かった…それで技術的に正しいかどうかは問題ではなかった」

「でも今は、プレイヤーはみんな完璧に正確に弾かなければならず、エンジニアは(例えば)毎回可能な限りベストなスネアサウンドを引き出さねばならなくなった」

「それもいいけど…フィール、感情に戻ろうよ。この録音を通して何がいいたいのか。キッズにとってドラムサウンドがどうとかなんて、どうでもいいと思うんだ」

「例えば、ワーナーからの最初の(Room335の収録された)アルバムだけど…僕自身が録音エンジニアもやってて、実はエンジニアをしたのは人生でたった2度目なんだ。だから音質はいい録音じゃないよ、でもとても成功した。みんな音楽を聞くんだ、音質じゃなくてね」

と、カールトンは昔のいい感じが、テクの向上とともに失われつつある事を憂いています。

動画のパート1では、どうしてスタジオからソロに転向したのか?の問いに対して…

「これまで素晴らしい人たちと演奏できて、ミュージシャンとしてすごく成長できた。それにいつも貢献できるように、がんばってきた。でも、さすがにこれだけ沢山やるとね…仕事になってしまった。76年頃からセッションに行くのが楽しくなくなってきた。だから方向転換の時期に感じた」

他の発言(既述)も併せて考えると、単純に仕事量だけでなかったと想像します。

​録音の仕事場の状況の変化も影響したのでしょう。

みんなで一緒に録音していたのが、分業となり、完璧さを要求されて楽しくなくなった…だからソロで好きな事をやろうとなったと。(その前にプロデューサーに転向しようとしましたが、上手くいきませんでした)


昔の録音にあって今ないものを知ればいい
​

昔は分業でなくスタジオに皆が揃って録音していました。

セッションはかなり楽しかったようです。
​
昔はミュージシャンはクレジットされず謎でしたが、今は当時の人たちのインタヴューを通して、どんなだったかを垣間見る事ができます。

全て英語ですが、いくつか参考となる動画をリンクしておきます。

グレン キャンベル、キャロル ケイ、ドン ランディ、ジム ケルトナー、ジョー オズボーン、その他大勢の当時のプレイヤーの話しを聴けます。


それらを観ると、カールトンが昔のセッションについて話していた意味がよく分かります。

彼らは毎日一緒に長時間演奏し、バンドそのものでした。

アレンジも、スタジオ内でプレイヤーの裁量で同時進行でなされました。

エゴはなく、お互いの強みを出し合う仕事場だったそうです。


ラフで、生なましさに溢れています。



バンドを遥かに超えたバンドだった
​

毎日10時間以上、卓越したミュージシャンが同じスタジオで一緒に何年も一緒に演奏するとは、一体どういう状態でしょう?

50〜70年代のスタジオは、バンドなど遥かにしのぐ化け物バンドだったという人は多いです。​

いわゆるバンドをやっている人とは、費やす時間が比較になりません。

だからお互いのテンポやフィールのコミュニケーションが、おそらく会話する以上にスムースだったと想像出来るのです。

だから史上最高のバンドとか言われたりするのです。


じゃあよほど正確なのか?

実は完璧な正確さを追求すれば、ズレたりしてます。

​でも、テンポとフィールのやり取りを熟知したミュージシャン同士の、その瞬間のコミュニケーションの記録だったのです。

結果、それが正解だったと40年経った今と比較して、個人的に思います。

分業で、クリックに合わせる事が前提となった今とは違います。


正確さの練習を超えなければならない今日
​

80年代以降、正確さが当たり前となりました。

クリックに合わせた上で上手に弾ける事が条件となりました。

もちろんパンクとか逆行するものも健在ですが…

次第にコンピューターと人間の融合になりました。

コンピューターと同期させたり、ヴォーカルすら録音されたのを保険として一緒に流していたり…

ピッチやタイムの修正が宅録で可能ですし、色んな楽器の音源も本物と聞き分けがつきません。


加えて人工知能が日々成長しています。

これら全てを表現の幅が広がっていい、とポジティヴにとらえる向きもあります。

しかし人工知能も含めてテクノロジーの向上を予想すると、人間の強みを真剣に考えなければならない時代かもしれません。

正確さの練習を超えるコンセプトが必要です。


完璧な正確さを追求すれば人工知能に負け、そして人間味を失うだけです。

逆に人工知能が人間の持つズレを表現しようと努力する事でしょう。


ではどうしたらいいか?

まず最初は基礎となるテンポのキープの練習は必要だと思います。

それで、メトロノームを使った従来の練習方法を紹介します。

​次に別の練習方法を紹介します。


メトロノームの使い方1:自分の中のテンポをキープするための練習

これは昔、ビル プレイクというL.A.で活躍するフリー系のサックス奏者から学びました。

僕の通うカレッジでよくライヴしており、彼の家でレッスンを受けました。

まずテンポの練習の仕方を教えてくれました。基礎が欠けている事が一発で分かったからでしょう。


例えば、♩=120とします。普通、これを1,2,3,4と鳴らすのですが…


これを半分の60にしましょう。

そして、クリックが2、4に鳴るようにカウントします。

つまりクリックが鳴っていない時に自分が1をカウントします。


ちょうどスネアドラムが2、4を叩いている感じにクリックを合わせます。

これでまずストレートなロックグルーヴを想像してみましょう。

ギターやドラムパートを想像しながら歌ってもいいです。


この想像するというのが大切です。


慣れてくるほど、想像のグルーヴが心地よく感じるでしょう。

まず楽器は持たないで、手で叩いてみましょう。


ジャストに合えばクリックが消されます。


自分がカウントをとっている感じをキープして下さい。

最初は合わせようとするでしょう。

次第に自分のカウントにメトロノームが合う感じになるはずです。

ドラマーに頼っていた人は、自分の中のテンポが強くなります。


そして今度はシャッフルを想像してみましょう。

3連のダッダ、ダッダを感じながら手拍子して下さい。

クリックの鳴る場所が若干思っていたのと違って来ませんか?

例えば、さっきはクリックより前に手拍子が鳴りがちだったのが、今度はクリックより後になっていたりとか言う具合です。


スウィングでやってみましょう。若干シャッフルよりゆったり感じるかもしれません。

ファンクのリズムでもやってみましょう。

最初よりも倍の細かさで感じるので、遅れがちになるかもしれません。


グルーヴによって自分の2、4のズレる場所が変わって来る…つまり同じテンポでも速さの感じ方が全く違うという事です。

一つのテンポに対し、色んなグルーヴを想像して練習する事が大切です。


感じ方のクセを把握しながら、どこを気をつけるべきか知りましょう。

ギターの練習の前に自分の感じ方を知ると楽です。

その後で想像するグルーヴで練習するとやりやすいです。


次に、もう一つの練習法です。

FBジャズギター研究会というサークルの中で、会長である江尻大作さんが紹介して下さった記事を通して知りました。

実はその記事を書いたのが、なんとビル プレイクでした。

コピペしたら失礼なので、僕なりに意味を消化して書きます。


2:自分と他者との折り合いをつけつつ自由に弾けるようになるための練習
​

ビル プレイクが“メトロノームを使うべきか、使わないべきか”という記事で、深い説明をしています。

​
タイムフィールとは(私達の内部の)クリエイティブなプロセスの一部であり、イマジネーションとも捉えられます。

リズムとは自分の内側で想像し、感じているものという事です。

また、リズムを想像する事自体、創造のプロセスの一部だと言っています。


どういう経緯で想像できるでしょう?

良い過去のリズム体験がなければ、良い想像もできませんよね?

だからリズム感を鍛えるという事は、自分が気持ち良いと感じるリズムを体験する事がまず第一です。

それは素晴らしい音楽を沢山、何回も聴く事でしか得られません。
​

つまり内側で気持ちいいと感じたそのフィールを想像し、再現しようとしているわけです。


だから​メトロノーム(外部)からそれを得よう(割り出そう)としても、不可能でしょう。

無機質、無反応なメトロノームは、テンポを提示する以上のものではないからです。

​だからメトロノームの拍を用いて、どうしたらスウィングフィールを導き出せるか?なんて事はできません。
​


外部とのバランスを保ちつつ、自由に演奏できるようになるためのメトロノーム
​

ではあらためてメトロノームの意義とは?

それは外部との折り合いをつける練習です。

ミュージシャン同士の演奏と比較すると、分かり易いです。


演奏中は他のミュージシャンのタイムを聴き、反応しなければいけません。

メトロノームとの違いは、集団による瞬間瞬間の創造で、自身もその一部となっています。

各自が良いと想像するテンポとフィールを提供しています。
​

​いいミュージシャンと演奏する時、そのテンポとフィールのギブ&テイクが上手く成立しているでしょう。

下手な人とやっても、自分のそれを相手のそれと上手くやり取りせねばなりません。


どちらにせよ、自分と外部とのバランスを取りながらの演奏となるのです。

これを上手くやるには、ストレスなく聴けて、反応する事が必要です。

メトロノームが練習ツールとして重宝するのは、この理由からです。


自分の中のイマジネーションと、外部との折り合いをつける課題を与えてくれます。


リズムだけでなく、コードやキーも想像を強いるメトロノームで鍛えるのがいい
​

もちろんバッキングトラックを使うのもいいです。

しかしバッキングトラックは、グルーヴやコードなどの詳細が固定された情報(有機的に変化しない)です。

その点、クリックだけの無機質なメトロノームはオープンです。

リズムのフィールだけでなく、キーやコードに対しても想像を働かせるよう強いられます。

それは大変ですが、それにより自分の内側の想像力が鍛えられ、豊かで自由になっていきます。

だから多くの場合、よりチャレンジを感じるメトロノームを使う事になります。


バッキングトラックを使うなら、メトロノームで十分に練習してからです。

そうすると、音源と自分が繰り出す音との関係性が鮮明になり、よく聴こえます。

そしてそれは自信や励みにつながります。それでリスクをとったり、冒険できるようになるのです。


正確さを目指す事からの脱却
​

これで正確さを目指すためのメトロノームから脱却できます。

そもそもメトロノームからいいタイムフィールを導き出そうとしても無駄だと分かりました。

それは数学的に正確に再現しようとしているからで…

自分の気持ちいい音楽体験から培った、想像するフィールを再現しようとしていないからです。

いいリズム感はいいリズム体験から生まれる、という事なんですね。

こんな話しはクラッシックの人にバカにされてしまいそうですけど…


時代の移り変わりと共に、認識が変わってしまったからです。

ラリーカールトンの動画をシェアしたのは、その過渡期を捉えていると思ったからです。

当時から正確さかフィーリングか?の議論はあり、過渡期を経験した彼の主張は「正確さもいいけど、フィールに戻ろう」でした。
​

50〜70年代のスタジオと今を比較して、なぜ昔の人は当時が未だに素晴らしいと言うのか?

ビルの言葉を借りれば、卓越したミュージシャンのテンポとフィールのギブ&テイクが上手く成立していたからと言えます。

卓越したミュージシャンが毎日長時間一緒に演奏しつつ培った、気持ちいいコミュニケーションがそこにあったからです。

そしてリスナーもそれを楽しんだのでしょう。

正確過ぎる今日の録音に、物足りなさを感じるのでしょう。
​


昔の音源を沢山聴く事が重要
​

となると、何をしたらいいか分かります。

​昔の音楽をよく聴いて、人のズレを含んだ録音を体験するべきです。

そして素直にいいなと感じた体験を蓄積していきましょう。


無理に好きになる必要もありませんし、憧れる必要もありません。

人の意見など、先入観を無くして聴けるのがベターです。


例えば、ジャズ系だとレイドバックした感じが特に推薦される向きがあります。

それだけ聞いて、そうだと決め込むのも良くありません。

そしてジョー パスはジャンピーとか言って、彼のタイムフィールはイケてないと決めつけるでしょう。


ところが一方で、パット メセニーはジョーについて、「アメイジングなタイム」と絶賛しています。

前ノリが最高とか、キチガイのようにグルーヴする、と書いています。


つまり、色々あるのです。

前でも後ろでもジャストでも、自分が素直にいい感じに聴こえるものを蓄積していけばいいのです。

人の意見によって「これがいい感じだ」と自分を洗脳しようとしない事です。

とりあえず良いと感じないなら、ニュートラルにしておきましょう。

気持ちいい体験の記憶を蓄積するのですから。

その記憶をネタに想像します。

自分の中の気持ちいいリズムの想像力を養う事が大切です。


それが自分の中から出て来るリズムと、勉強のようにメトロノームに合わせる正確さのリズムとの違いだと思いました。

これは結局、自分の中で感じている(歌っている)事を楽器を通して再生(表現)する、つまり楽器は自分自身であり、楽器は幻想に過ぎないと以前の記事に書いた事と一致します。


おわりに
​

今回は記事を書いていて、自分にとって益になるものでした。

コードは割り切れるので、説明しやすいのですが、リズムに関しては難しいです。

FBジャズギター研究会の江尻大作会長の翻訳記事がなければ、ここまで書けませんでした。

グループではこのようなマニアックな会話が多く、参考になります。


僕も正確さとフィールの折り合いを、上手く説明つけられずにいました。

自分の中の気持ちいいリズム体験を沢山積む事、そこから想像したリズムが自分のリズムだという事です。

そのリズムでメトロノームを使って練習する事が大切です。


今回の記事がためになったら是非シェアして下さい、よろしくお願いします。
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